将来もし病気やケガで働けなくなったときのことが心配です。働けなくなったら住宅ローンの支払いができなくなるしどうしたらいいですか?
「家を買ってからもしも病気やケガで働けなくなったら?」と不安に思って家を買うことをあきらめる方や希望のマイホームよりも間取りを小さくしたり、住宅のグレードを下げたり考える方は多いようです。
住宅ローンは長い年数を掛けて返済していくので、将来の資産形成のために働く意欲はあるけれども、ローン返済している期間に病気やケガなどの不可抗力で働くことが出来なくなるリスクは考えてしまうと思います。
病気やケガで働けなくなった場合の住宅ローンについて考えていきましょう。
病気やケガで働けなくても住宅ローンの返済は続く
住宅ローンを組むときに多くの場合団体信用生命保険(団信)に加入します。
「団信に加入しておけば、万が一の場合、住宅ローンを全額払わなくてもよいから安心」と思われている方は多いです。
確かにそのとおりなのですが、では「万が一の場合」ってどんな場合なのでしょうか?
団信で残りの住宅ローンが全額払わなくてもよいのは、「死亡」または「所定の高度障害状態になってしまった場合」のいずれかです。
一般的な団体信用生命保険の所定の高度障害状態とは
- 両眼の視力を全く永久に失ったもの
- 言語またはそしゃくの機能を全く永久に失ったもの(注1)
- 中枢神経系または精神に著しい障害を残し、終身常に介護を要するもの(注2)
- 胸腹部臓器に著しい傷害を残し、終身常に介護を要するもの(注2)
- 両上肢とも、手関節以上で失ったかまたはその用を全く永久に失ったもの
- 両下肢とも、足関節以上で失ったかまたはその用を全く永久に失ったもの
- 1上肢を手関節以上で失い、かつ、1下肢を足関節以上で失ったかまたはその用を全く永久に失ったもの
- 1上肢の用を全く永久に失い、かつ、1下肢を足関節以上で失ったもの
つまり団信に加入していたとしても、病気やケガで一時的に一定の期間働けなくなったとき、住宅ローンは払い続けなくてはならないのです。
フラット35の団体信用生命保険は所定の身体障害状態が対象
フラット35の新機構団体信用生命保険は高度障害に替えて所定の身体障害状態になると保険金が支払われる内容になっています。
- 身体障害者福祉法に定める障害の級別が1級または2級の障害に該当し、身体障害者手帳の交付を受けたとき
〈身体障害状態の例〉
例えば…ペースメーカーを植え込み、自己の身辺の日常生活活動が極度に制限されている(身体障害認定1級)
例えば…人工透析を受けており、自己の身辺の日常生活活動が極度に制限されている(身体障害認定1級)
従前の高度障害と比べると、保険金の支払い要件が少し緩くなりました。
保障範囲が少し偏っている団体信用生命保険
利用する住宅ローンを取り扱う金融機関によっては、金利に上乗せする事で団信の保障範囲を広げる事ができます。例えば、フラット35の新機構団信では金利+0.24%で保障範囲を以下の様にすることができます。
- 死亡したとき(新機構団信と同じ。)
- 身体障害者福祉法に定める障害の級別が1級または2級の障害に該当し、身体障害者手帳の交付を受けたとき(新機構団信と同じ。)
- 3大疾病(がん・急性心筋梗塞・脳卒中)が原因で一定の要件※に該当した場合
- 公的介護保険制度に定める要介護2から要介護5までのいずれかに該当した場合など
保障範囲を把握するためには、「一定の…」や「所定の…」という内容をしっかりと読み解く必要があります。※の内容を細かくみると、
①がん
保険期間中に、所定の悪性新生物(がん)に罹患したと医師によって病理組織学的所見(生検)により診断確定されたとき。ただし、以下の場合には弁済されません。
- 上皮内がんや皮膚の悪性黒色腫以外の皮膚がん
- 保障の開始日前に所定の悪性新生物(がん)と診断確定されていた場合
- 保障の開始日からその日を含めて90日以内に所定の悪性新生物(がん)と診断確定された場合
- 保障の開始日からその日を含めて90日以内に診断確定された所定の悪性新生物(がん)の再発・転移などと認められる場合
②急性心筋梗塞
保障の開始日以後の疾病を原因として、保険期間中に次のいずれかの状態に該当したとき。
- 急性心筋梗塞を発病し、その急性心筋梗塞により初めて医師の診療を受けた日からその日を含めて60日以上、労働の制限を必要とする状態(軽い家事などの軽労働や事務などの座業はできるが、それ以上の活動では制限を必要とする状態)が継続したと医師によって診断されたとき。
- 急性心筋梗塞を発病し、その急性心筋梗塞の治療を直接の目的として、病院または診療所において所定の手術を受けたとき。
③脳卒中
保障の開始日以後の疾病を原因として、保険期間中に次のいずれかの状態に該当したとき。
- 脳卒中を発病し、その脳卒中により初めて医師の診療を受けた日からその日を含めて60日以上、言語障害、運動失調、麻痺などの他覚的な神経学的後遺症が継続したと医師によって診断されたとき。
- 脳卒中を発病し、その脳卒中の治療を直接の目的として、病院または診療所において所定の手術を受けたとき。
上記の様に、特にがんに対する保障は大きいものとなっています。がんと診断されれば病状や身体の状態で働くことが出来る出来ないに拘わらず、住宅ローンが完済される内容となっています。
民間の生命保険会社でも働けなくなったときにもらえる保険がある
会社員や公務員の方が加入している健康保険では、病気やケガが働けなくなったとき、病気休業中に被保険者とその家族の生活を保障するための「傷病手当金」を最長1年6か月間もらえることがあります。
しかしながら、自営業の方が加入している国民健康保険は「傷病手当金」の制度はありません。
病気やけがで働けなくなったとき「毎月の生活費だけでなく住宅ローンの支払いまで…」と考えると家を買うことに不安に感じてしまいます。
このようなリスクを補うための保険が民間の保険会社にあります。「所得補償保険」「就業不能保険」「収入保障保険」と呼ばれている保険商品です。
所得補償保険・就業不能保険・収入保障保険の違い
「所得補償保険」「就業不能保険」「収入保障保険」は似たような名前ですが、商品によって内容は異なっています。簡単に説明すると以下のような違いがあります。
-取り扱い-
- 所得補償保険
損害保険会社が取り扱っている - 就業不能保険と収入保障保険
生命保険会社が取り扱っている
-補償と保障-
- 所得補償保険
補償、つまり所得を補う保険です - 就業不能保険と収入保障保険
いずれも保障であり、生活を保つ保険です
-支払い事由-
- 所得補償保険と就業不能保険
被保険者が病気やケガで働けなくなったときに支払われる - 収入保障保険
被保険者が死亡もしくは保険会社所定の高度障害状態のとき支払われる
病気やケガで働けなくなっても、生活費や学費、住宅ローンの支払いなどの支出は続いていきます。
ただでさえ病気やケガのことで不安な日々を送っているのに、さらにお金の心配も出てきてしまうと本当に大変です。
民間の保険会社の商品は、特定の病気に限定して診断確定や手術等の要件で保険金を支払うというのではなく、病気やケガの種類に拘わらず働くことが難しい身体の状態になった時に保険金を支払うという考えで保険商品が作られています。。
就労不能状態の範囲は保険会社によって異なりますが、団信の保障と比べると「働けない状態」の保障範囲はバランスの取れたものであると言えます。
住宅ローン返済リスクを回避する方法
住宅ローンの返済リスクを抑える方法は様々です。住宅ローン返済額を目一杯下げる事も一つです。
しかし、返済額を下げるだけでは希望の家づくりが出来なくなるかもしれないし、どれだけ下げれば安心できるのかの判断も付きにくいと思います。
その場合は、保険を利用することで解消できます。保険の種類は団信や民間保険会社の保険があります。
あなたのライフプランやマイホーム計画、リスクの取り方や価値観に合わせて適正な保障の考え方を選択したいところです。
どのように保険を考えればいいのか?よく分からないという方は家づくりコンサルティングにご相談ください。住宅ローンを組んだ後、働けなくなった場合の最適なリスク回避方法をご提案致します。
ご相談時によくいただく質問
- 世界規模の金融危機に陥った2008年から2019年までの12年間、住宅ローン金利はどう推移してきたのか?
- 消費税増税前と増税後、どっちに建てるのがお得?
- 住宅購入の予算は年収の何倍程度が適正?
- 病気やケガで働けなくなったら住宅ローンはどうなる?
- 住宅ローン、どうやって比較すればいいんですか?
- なぜハウスメーカーや工務店によって坪単価が違う?
- 家づくりに支払うお金、いつどのくらい必要なの?